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【後編】医師DX座談会|医師が考える病院へのスマートフォン提案法

株式会社メドコムは、3名の現役医師によるDX座談会を開催しました。医師の意見交換により「PHSの利用による医療現場の非効率」や、「医療用スマートフォン普及による進化の可能性」について探ります。 
中編では、医師や看護師はPHSの利用に慣れており、医療用スマートフォンを望む声は少ない現状がわかりました。一方で、医師はPHS利用による電話対応の遅れや、緊急以外の連絡がくる点が非効率だと感じています。 
最終章となる後編では、医療用スマートフォンと電子カルテが与える影響や、病院への医療用スマートフォン提案法について医師が検討します。

目次[非表示]

  1. 1.座談会参加者のご紹介
  2. 2.テーマ5『スマートフォン導入の影響を電子カルテと比較 』
  3. 3.テーマ6『医師が考える病院へのスマートフォン提案法』
  4. 4.医師DX座談会|後編のまとめ

座談会参加者のご紹介

新井医師(仮名):医師10数年目で、350床ほどの地域中核病院に勤務し、院内用PHSを利用している。日本内科学会認定内科医・日本神経学会認定神経内科医・日本脳卒中学会認定脳卒中専門医・日本脳神経血管内治療学会専門医。

佐々木医師(仮名):医師10年目で、関東の250床ほどの民間総合病院に勤務し、院内用PHSを利用している。日本内科学会総合内科専門医・日本呼吸器学会呼吸器専門医。

中嶋医師(仮名):医師6年目で、内科・脳神経内科・救急科の医師として600床ほどの総合病院で勤務。医療用スマートフォンを使用している。

(株)メドコム川本:医師DX座談会の進行役。2年間、医療用スマートフォン「メドコム」の開発に携わり、現在はマーケティング業務に従事している。


テーマ5『スマートフォン導入の影響を電子カルテと比較

メドコム川本

医療現場で、紙カルテから電子カルテへの移行は、DX化の1歩だったのではないでしょうか。電子カルテ化の影響や効果について教えてください。

中嶋医師

私は、紙カルテの経験はほとんどないのですが、電子カルテのほうが速く入力できるので、助かっています。それに、手書きの手紙やカルテは、読み解くのが難しいです。

佐々木医師 

紙カルテから電子カルテに変わったことで、カルテの記載内容や情報量が増えたと思います。 
私は紙カルテを導入しているクリニックでの勤務経験もあります。紙カルテを書きながら外来診療をするのは本当に大変です。もし私が紙カルテで多くの診察に対応するとなると、どうしても略語が増えたり字が汚くなったりして、アセスメントの記載も乏しくなってしまうと思います。
 
また、処方箋や検査・注射などのオーダーが紙媒体で手書きだと、ものすごくつらいです。紙カルテから電子カルテに変わって、パソコン画面で選択や記載をするだけで終わるようになった点では、かなりの時間短縮だと思います。 
多用はよくないですが、電子カルテはテキスト内容のコピーによる引用や、自分のセットやパスを展開できる点も大きなメリットです。
 
ほかの病院へアルバイトに行くと、電子カルテを導入しているのに検査オーダーだけが紙媒体の病院もあります。そういうときは「どうにかして検査オーダーも電子にしてほしい」と切に思いますね。

メドコム川本

「書く煩わしさがなくなる」という点で、電子カルテは大きな効果を発揮しているんですね。もし、PHSからスマートフォンに変わったときに、電子カルテ化と同等のインパクトは得られると思いますか?また、どのような影響が考えられますか?

佐々木医師

PHSから医療用スマートフォンに変わり、チャットやメール機能が簡単に使えるようになれば、「電話の回数が緊急時に限られる」といったメリットが期待されます。ただ、現状は医療用スマートフォンで紹介状を書いたり、オーダーをしたりすることはないでしょうし、「電子カルテと同等のインパクトがある」とまではいえないです。

新井医師

医療用スマートフォンの導入で、電話が緊急事態に限られるのはよいですね。 
若い世代は、スマートフォンでレポート作成をする医師もいるようなので、そのうちフリック入力で診断書や紹介状を作成する日がくるかもしれません。 
医療用スマートフォンで入力した内容が、クラウドかイントラネットで、電子カルテシステムと自動同期できるとよいですね。

中嶋医師

私は医療用スマートフォンを使っていて、LINE WORKSといったアプリのグループチャットができるところがメリットだと思います。ミーティング時間の急な変更やリマインドなど、「電話するほど緊急ではないが、全体に伝えたい」という連絡時に便利です。


スマートフォン導入の影響を電子カルテと比較 』のまとめ


・電子カルテ導入の影響:記載内容や情報量が増加した、紙カルテの読みにくさが改善された、処方やオーダーが簡単などの、大きな業務改善効果があった。

・医療用スマートフォン導入の影響:紹介状やオーダーの業務を、医療用スマートフォンでおこなうことは難しい現状がある。医療用スマートフォンの導入が、電子カルテと同等のインパクトを与えるかは未知数といえる。
 
医療用スマートフォンを利用している医師からは、「グループチャットでスタッフ間の情報共有が向上する」といった意見も聞かれました。


テーマ6『医師が考える病院へのスマートフォン提案法』

メドコム川本

最後に、もし先生方がメドコムの立場で病院にスマートフォン導入を提案するならば「誰」に「どのような提案」をするか教えてください。

中嶋医師

当院では、医師は医療用スマートフォン、看護師はPHSの利用が基本です。そのため、看護師への医療用スマートフォン導入を目指す想定でお話しします。 
おそらく、看護師は現状のPHSで満足していると思うので、看護部だけを動かすのは相当大変です。 
そのため、まずは医師側に「医療用スマートフォンは看護師との連携がしやすい」というメリットを伝えます。そのあと、医師から看護師に「医療用スマートフォンを導入してほしい」という意見を出してもらうと、上層部を納得させやすいのではないでしょうか。

佐々木医師

私が医療用スマートフォン導入をすすめる立場なら、全職員に対して提案をしますね。

医師には、今回の座談会で挙がったようなメリットを説明します。 看護師には、調べものがしやすくなったり、指示受けの確認作業がしやすくなったりすることを伝えるとよいでしょう。
 
システム部や総務部には、中央で医療用スマートフォンの一括管理をすれば、異動による登録が簡便になり、連絡もつきやすい点を説明します。また、グループ会話による連絡のしやすさもアピールします。


病院理事長へは、医療用スマートフォンが全職員にとって、業務の効率化や改善につながる点と、コストカットを売りにしてはと考えました。

新井医師

私も、医師には医療用スマートフォン導入で利便性が上がることや、外部アプリを許容するようになれば、活用の幅が広がる点を中心に話します。 
看護師やほかのスタッフには、チャットのメッセージ機能が喜ばれそうです。電話で聞くほどではないときや、「明日までに確認すればよい」といったときには便利ですよね。
 
当院のネックといえば、購買部あたりでしょうか。購買部はコスパ意識が強すぎるのと、牛歩でしか仕事が進みません。費用面だけでなく、医療用スマートフォン導入による効率化で派生する、収益増見込みも折り込んで提案したいです。
 
先生方もおっしゃっているように、PHSから医療用スマートフォンに変わることで、効率化できる業務にフォーカスしたプレゼンをすると、よいと思います!


『医師が考える病院へのスマートフォン提案法』のまとめ

・医師や看護師への提案:チャット機能や指示受けなど、医療用スマートフォンによる利便性の向上を説明する。医療用スマートフォン導入を、医師から看護部に働きかけるよう促す。

・システム部や総務部への提案:中央管理の簡便さや、連絡手段の効率化をアピールする。

・購買部への提案:医療用スマートフォンの業務効率化による、収益増の見込みを伝える。

​​​​​​​・病院理事長への提案:医療現場の業務効率化と、コストメリットを強調する。
 
現場の医師や看護師だけでなく、上層部やシステム部など病院全体にメリットをアピールすると、医療用スマートフォン導入は進む可能性があります。


医師DX座談会|後編のまとめ

後編の記事では、医療用スマートフォンと電子カルテが与える影響や、病院への医療用スマートフォン提案法についてお伝えしました。
 
医療現場において、電子カルテの導入は大きな業務改善効果がありました。医療用スマートフォンの導入が、医療現場に電子カルテほどの影響を与えるかは未知数です。一方で、医療用スマートフォンを利用している医師からは、「業務の効率化につながっている」という声も聞かれています。 
また、医師からは、「病院に医療用スマートフォンを導入するためには、現場の医師や看護師だけではく、スタッフ全体への提案が重要」との意見がありました。
 
全3編にわたる医師DX座談会では、PHS利用による非効率的な業務のようすや、医師が医療用スマートフォンにかける期待などを検討してきました。 
医師や看護師はPHSに非効率さを感じつつも、利用に慣れてしまっており、医療用スマートフォン導入は進みにくい現状があります。
一方で、医療用スマートフォンでの情報収集や、電子カルテ連携などさまざまな機能に、医師が大きな期待を寄せていることもわかりました。
 
医療現場の業務負担改善における、「医療用スマートフォンの可能性」を感じる座談会となりました。

メドコム編集部 川本拓也
メドコム編集部 川本拓也
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