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【前編】医師DX座談会|私用スマートフォンの実情と医療用への期待

「電波環境協議会の調査」によると、日本の医療機関のPHS導入率は、83.9%に上っています。医療用スマートフォンを導入している医療機関は、限られているのが現状です。
この現状をふまえて株式会社メドコムは、3名の現役医師によるDX座談会を開催しました。「PHSの利用による医療現場の非効率」や「医療用スマートフォン普及による進化の可能性」について、医師が意見交換します。
医師DX座談会前編の記事では、医療現場における私用スマートフォン利用の実態と、医師が医療用スマートフォンに期待する機能についてお伝えします。

目次[非表示]

  1. 1.座談会参加者のご紹介
  2. 2.テーマ1『医療現場における私用スマートフォンの利用状況』
  3. 3.テーマ2『医療用スマートフォンに期待する機能』
  4. 4.医師DX座談会|前編のまとめ

座談会参加者のご紹介

新井医師(仮名):医師10数年目で、350床ほどの地域中核病院に勤務し、院内用PHSを利用している。日本内科学会認定内科医・日本神経学会認定神経内科医・日本脳卒中学会認定脳卒中専門医・日本脳神経血管内治療学会専門医。

佐々木医師(仮名):医師10年目で、関東の250床ほどの民間総合病院に勤務し、院内用PHSを利用している。日本内科学会総合内科専門医・日本呼吸器学会呼吸器専門医。

中嶋医師(仮名):医師6年目で、内科・脳神経内科・救急科の医師として600床ほどの総合病院で勤務。医療用スマートフォンを使用している。

(株)メドコム川本:医師DX座談会の進行役。2年間、医療用スマートフォン「メドコム」の開発に携わり、現在はマーケティング業務に従事している。


テーマ1『医療現場における私用スマートフォンの利用状況』

メドコム川本

先生方が職場で私用スマートフォンを使ってしまう場面や、その理由を教えてください。

佐々木医師

私はこれまでに勤務した病院では、PHSしか支給されていません。そのため、私用スマートフォンも職場で日常的に使っています。おもに、私用スマートフォンは病棟や外来などで、薬剤・疾患・治療法を調べたいときに使います。ほかには、計算・医療用アプリ・電子書籍などの利用時に、私用スマートフォンを使うことが多いですね。
患者さんの転院や紹介などの際に、紹介先の先生の名前を確認するために、私用スマートフォンを用いることもあります。私用スマートフォンは、患者さんの前で堂々と出すわけではなく、配慮しながら使用しています。

中嶋医師

 私の勤務している病院は、医療用スマートフォンを導入しています。PHS時代を振り返ると、病院外での連絡は私用スマートフォンを使っていましたが、病院内で業務に使うことはなかったように思います。ただ、調べものを含めると、私用スマートフォンをけっこう使っていますね。

新井医師

私の勤務する病院は、佐々木先生と同様にPHSを使っています。私も、病棟診療中に私用スマートフォンを持ち歩いており、使い方は皆さんと同様です。私用スマートフォンでは、インターネット上で情報検索をしたり、クラウドに保存している自前の資料を見たりしています。
また、脳卒中疑いの患者さんが受診するとき、某SNSサービスを介して医師に連絡が来るため、私用スマートフォンの所持は必須といえます。
救急隊からERに、脳卒中が疑われる患者さんの電話がくると、脳卒中を診療する医師の私用スマートフォンに、全体連絡される仕組みが存在するんです。

メドコム川本

皆さんのお話から「私用スマートフォンは使わざるを得ない状況」だと感じました。仕事で、私用スマートフォンを使うことに抵抗感はありますか?

佐々木医師

病院での私用スマートフォン利用に大きな抵抗感はありませんが、患者さんやご家族などの目は多少気になります。私はスマートフォンのカバーがシンプルなので、医療現場での使用に抵抗はありませんが、派手なカバーの方は使いにくいと感じるかもしれません。
ただ、私用スマートフォンが医療用に切り替わったとしても、「患者さんの眼前で堂々と調べものをする」といった大きな行動変化はないと思います。
ほかには、病院のWi-Fiを使っているので、私用スマートフォンの個人情報漏洩リスクは気になりますね。病院からの電話を受けるときに医療用スマートフォンが使えると、オンオフがしっかりとわけられてよいと思います。

新井医師

私も私用スマートフォンを使うときに、患者さんやご家族の視線が気になります。
医療用スマートフォンの専用機種が完成して、患者さんに広く認知されればよいのですが、iPhoneやAndroidの機種を転用して医療用にしている現状だと、患者さんの目から見て医療用なのかがわかりづらいです。

佐々木医師

たしかに、医療用スマートフォンが現状のPHSくらい浸透するといいですよね。
医療用スマートフォンだとわかるようなカバーやシールを作って、患者さんやご家族に理解してもらう工夫はできるんじゃないでしょうか。


『医療現場における私用スマートフォンの利用状況』のまとめ

  • 私用スマートフォンの利用シーン:薬剤・疾患・治療の調べもの、計算、院外での連絡手段など、私用スマートフォンの用途は多岐に渡っている。
  • 私用スマートフォンへの抵抗感:患者さんやご家族の目、個人情報漏洩リスクが気になり、私用スマートフォン利用への抵抗感がある。医師は、医療現場での私用スマートフォン利用に抵抗感があるものの、利用は必須である現状がわかった。


テーマ2『医療用スマートフォンに期待する機能』

メドコム川本

PHSを利用している状況下で、院内スマートフォンに期待する機能はありますか?

新井医師

もし医療用スマートフォンを使うなら、インターネット接続やイントラネットなどで、文献や資料の検索ができたらよいですね。大きな病院は施設単位で医学文献を購読しているので、医療用スマートフォンからアクセスできたら便利そうです。
さらに、UpToDateといったエビデンス検索の有料サービスも利用できるとなおよいと思います。

医療用スマートフォンが病棟に普及して、患者さんの指示確認や処方切れのメンションなどを、チャット機能や掲示板機能で管理できるとすごく便利になりそうです。
最近はAIも進歩しているので、音声入力や翻訳機能による多言語診療に役立つ日がくると素晴らしいと思います。

佐々木医師

新井先生の意見に賛成です!
私はカルテと医療用スマートフォン端末が連動し、医師コンサルトや指示依頼などの確認ができるとよいと思います。
私の病院は、他科からのコンサルトや病棟からの指示依頼などは、電子カルテメールで受ける体制なため、カルテを起動しないと確認できません。

カルテから離れた場所にいると、連絡に気づかないことがあり、「医療用スマートフォンに通知が入るといいな」と思うことがあります。
ほかには、医療用スマートフォンのカメラ機能で患者さんの所見を撮影して、カルテにすぐ反映できるとよさそうですね。例えば、患者さんに薬疹が現れたときに写真記録ができれば、医師だけではなく看護師をはじめとするコメディカルにとっても便利なのではないでしょうか。

新井医師

確かに、カメラ機能はいいですね。
脳神経内科では、てんかんの診断をするために意識障害が起こったときの所見が非常に大事なので、記録が即座にできるとありがたいです。

中嶋医師

翻訳機能も便利ですよね。特に、英語以外の言語しか通じない患者さんが来院されたとき、翻訳ツールがないと診察の難易度が極端に上がりますからね。
オフラインでも使用可能な医療用の翻訳アプリが備わっていると、ありがたいと思います。


『医療用スマートフォンに期待する機能』のまとめ

・文献検索:インターネットやイントラネット接続で、文献検索やエビデンスサービスの利用ができる。
・電子カルテとの連携:指示依頼やコンサルト依頼が、医療用スマートフォンに通知される。
・カメラ機能:患者さんの所見をタイムリーに記録する。
・多言語対応の翻訳機能:英語が通じない患者さんの診療に役立つ。
・基本的なアプリ機能:電卓やストップウォッチを、日々の診療や心肺蘇生時に活用する。

医師は文献検索や電子カルテとの連携などに関して、医療用スマートフォンに大きく期待していることがわかります。

医師DX座談会|前編のまとめ


前編の記事では、医療現場における私用スマートフォンの利用状況や抵抗感、医師が医療用スマートフォンに期待する機能についてお伝えしました。
医師は私用スマートフォンの利用に抵抗感がありつつも、調べものや院外での連絡などで使わざるを得ない状況です。
一方で、医療用スマートフォンでの情報収集や、電子カルテ連携などさまざまな機能に、医師が期待を寄せていることがわかりました。

中編の記事では、医療現場におけるスマートフォンのニーズや、PHSの非効率について、医師が徹底討論していきます。

メドコム編集部 川本拓也
メドコム編集部 川本拓也
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