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インシデント発生時の病院経営トップのメディア対応         メドコム主催セミナー

2025年2月19日に関西学院大学様に共催いただき、NHKラジオセンター ニュースデスク 山崎 淑行氏をお招きして、オンラインセミナーを開催しました。テーマは「インシデント発生時の病院経営トップのメディア対応」。医療機関においての危機管理や広報、報道対応 の重要性について、またインシデント発生時のメディア対応のポイントなどについてお話いただきました。

目次[非表示]

    1. 0.1.はじめに
    2. 0.2.インシデント発生時の初動対応
    3. 0.3.メディア対応の基本原則
    4. 0.4.メディア対応の具体的なステップ
    5. 0.5.成功事例と失敗事例
    6. 0.6.経営者の心構え

はじめに

病院においてインシデント(事故やトラブル)が発生した際、適切なメディア対応を行うことが病院の信頼を守るうえで重要です。特に、経営トップの対応が病院のイメージや患者・家族の安心感に大きな影響を及ぼします。本記事では、病院経営者向けに、メディア対応のポイントを解説します。


インシデント発生時の初動対応

病院でインシデントが発生した際、初動対応の良し悪しがその後の対応の成否を決定づけます。特に重要なのは、情報の迅速な収集と正確な事実確認です。初動対応では、以下の点を押さえる必要があります。

  • 迅速な情報収集と事実確認:憶測ではなく、確認された情報のみをもとに対応を進める。
  • 院内スタッフとの連携強化:経営陣・医療スタッフ・広報担当が共通認識を持ち、統一された対応を行う。
  • 記者会見や公表の準備:メディアへの対応方針を早期に決定し、対応窓口を一本化する。


メディア対応の基本原則

インシデントが発生した際のメディア対応では、「正確」「迅速」「誠実」の3原則を徹底することが不可欠です。

  • 正確な情報提供
    • 確認できた事実のみを公表し、不確かな情報を発信しない。
    • 情報を誤ると後の対応が難しくなるため、慎重に発信する。
  • 迅速な対応
    • 早い段階で記者会見や公式発表を行い、不必要な憶測を防ぐ。
    • 遅れた対応は「隠蔽」と受け取られる可能性がある。
  • 誠実な対応
    • 言い訳や責任転嫁はせず、患者・家族に寄り添った発信を行う。
    • 事実をありのまま伝え、再発防止策を明確に示す。

メディア対応の具体的なステップ

  1. 初期対応
    • 院内で情報を統一し、広報担当者を決定する。
    • 必要に応じて法律専門家や外部の広報コンサルタントと協議する。
    • 対応方針を病院全体で共有し、情報の一貫性を保つ。
  2. 記者会見・報道対応
    • 話すべき内容
      • 事実関係(発生経緯、影響範囲、現在の対応状況)
      • 患者・家族への対応と補償方針
      • 今後の再発防止策
    • 避けるべき表現
      • 「担当者のミスだった」などの責任転嫁
      • 事実の隠蔽や誤魔化し
      • 「詳細は調査中」と繰り返すだけの対応
  3. その後の対応
    • 定期的な情報発信:進捗状況を定期的に発表し、関係者の不安を解消する。
    • 再発防止策の実施と報告:具体的な防止策を講じ、それを明示的に公表する。
    • 院内の意識向上:職員への教育を徹底し、同様のインシデントが発生しないようにする。


成功事例と失敗事例

成功事例
ある病院では、発生直後に迅速な記者会見を行い、院長自らが誠実に事実を説明しました。その結果、メディアの評価も比較的穏やかで、病院の信頼回復が早期に進みました。

失敗事例
一方で、別の病院では、初動対応の遅れや情報隠蔽が疑われたことで、メディアの報道が過熱し、病院の評判が大きく損なわれました。適切な対応ができなかったことで、結果的に患者の信頼を失う事態となりました。


経営者の心構え

まずは「知られたくない」「大げさにしたくない」「隠したい」といった、人間の当然の感情を乗り越える意識をすることがもっとも重要です。そのうえで、ノウハウを実行していくことが大切です。

  • 自ら公にしていく姿勢を持つ
    • SNSなどの情報化が進んでいることで、隠してもいつかは知られるリスクが高い、つまり隠し通せないことを認識しておく
    • 自ら公にする姿勢が後のダメージを抑えられる
  • 事実関係が分からないことや説明ができないことは、”わからない理由”、”答えられない理由”を伝える
    • 理由を説明することで納得してもらえ、適切な対応となる


まとめ ー インシデント発生時の病院の信頼を守るために

病院経営トップがインシデント発生時にメディア対応を誤ると、病院の信頼に大きな影響を及ぼします。以下のポイントを押さえ、適切なメディア対応を行うことが、信頼回復の鍵となります。

  1. 正確な情報収集を徹底する
  2. 迅速に対応し、事実を発信する
  3. 誠実な態度で説明し、責任を明確にする
  4. 再発防止策を策定し、透明性をもって報告する
  5. 長期的な信頼回復に向けた施策を実施する

インシデント対応において、「対応の仕方次第で病院の未来が変わる」という意識を持ち、適切な行動を心がけていきましょう。

メドコム編集部 大野恵美
メドコム編集部 大野恵美
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