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2024年診療報酬改定のポイントをわかりやすく解説|医療現場の何が変わる?

2024年は、医療、介護、障害福祉サービスの報酬が同時に改定される「トリプル改定」の年です。少子高齢化などの社会情勢を背景に、この改定に注目が集まっています。本記事では厚生労働省の基本方針を踏まえて、以下の点を中心にご紹介します!

  • 2024年診療報酬改定の背景
  • 2024年診療報酬改定のスケジュール
  • 2024年診療報酬改定のポイント

2024年診療報酬改定の背景から具体的な施策まで、詳細にわたって解説します。
ぜひ最後までお読みください。

目次[非表示]

  1. 1.2024年診療報酬改定が注目される理由は6年に一度の「トリプル改定」
  2. 2.2024年診療報酬改定の背景
  3. 3.2024年診療報酬改定のスケジュール:6月1日施行に後ろ倒し
  4. 4.2024年診療報酬改定のポイント
  5. 5.医療現場での体制の変化
  6. 6.まとめ
  7. 7.参考文献

2024年診療報酬改定が注目される理由は6年に一度の「トリプル改定」

 診療報酬とは、医療機関で受けた医療行為に対して支払う費用のことです。厚生労働大臣が定めた点数表に基づき、医療行為ごとの点数を合計して算出されます。患者さんは自己負担分を支払い、残りは医療保険が負担する仕組みになっています。診療報酬改定では、医療サービスや医薬品の公的価格が見直されます。

 診療報酬は2年に1度改定されますが、2024年は医療・介護・障害福祉の3つの報酬が同時に改定される「トリプル改定」の年に当たります。介護報酬と障害福祉サービス等報酬は3年に1度改定されるため、6年に1度のタイミングで3制度の報酬が一斉に見直されるのです。トリプル改定が注目される理由は、3つの制度間の調整が行われる可能性が高く、大規模な改定となることが予想されるためです。


2024年診療報酬改定の背景

2024年診療報酬改定の背景には、さまざまな問題や目標があります。

2025年問題
 2025年問題とは、日本の超高齢化社会の到来に伴い、医療・介護・年金などの社会保障制度が大きな変革を迫られる問題です。具体的には、2025年には団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、医療・介護需要が急増することが予想されています。高齢化の進展により、医療・介護サービスの利用者が大幅に増加する一方で、生産年齢人口の減少により、これらのサービスを支える担い手が不足することが懸念されているのです。

2040年問題
 2040年問題とは、日本の人口構造が大きく変化し、生産年齢人口の減少と高齢者人口の増加が同時に進行することで、社会保障制度の持続可能性が脅かされる問題のことです。具体的には、2040年頃には、団塊ジュニア世代が高齢化し、生産年齢人口が大幅に減少すると予想されています。一方で、高齢者人口は増加し続け、医療・介護需要の増大が見込まれます。この結果、現行の社会保障制度を維持することが困難になり、財政的な圧迫が懸念されているのが2040年問題の核心です。

地域医療構想に向けた最後の改定
 地域医療構想とは、目標に地域の実情に応じた効率的な医療提供体制を構築するための計画です。具体的には、地域の医療需要と医療資源の状況を分析し、病床の機能分化や連携強化などを通じて、地域の実情に応じた医療提供体制を実現することが目的とされています。

 地域医療構想は2025年を目標年次としていることから、2024年の診療報酬改定が、実現に向けた最後の機会となるとも指摘されています。したがって、医療提供体制の再編成に大きな影響を及ぼすことが予想されます。地域の実情に応じた効率的な医療提供体制の構築を目指すことが、目的の1つとなっています。

地域包括ケアシステムの深化
 地域包括ケアシステムとは、高齢者が可能な限り住み慣れた地域で、自立した生活を送れるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が一体的に提供される仕組みです。2025年を目途に全国で構築が進められています。
2024年の診療報酬改定は、地域包括ケアシステムの深化・推進を目的の1つとしており、高齢化社会に対応した持続可能な医療・介護提供体制の構築を目指しています。

医療DX令和ビジョン2030
 医療DXとは、医療分野におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)のことで、データやデジタル技術を活用して、医療サービスの提供方法や業務プロセスを変革していくことを指します。

 医療DX令和ビジョン2030とは、2021年12月に厚生労働省が策定した、医療分野におけるデジタル化の目標と具体的な取り組みを示したビジョンです。2030年までに医療分野のデジタル化を加速し、患者さん中心の医療サービスの実現を目指しています。具体的な目標として以下が掲げられています。

  • 電子処方箋の全面導入
  • 電子カルテ情報の共有基盤の構築
  • オンライン資格確認の範囲拡大
  • 医療機関の業務効率化

 2024年の診療報酬改定は、医療を取り巻くさまざまな課題に対応するために行われるものです。その基本認識として、以下の4点が掲げられています。

1. 物価高騰・賃金上昇、経営の状況、人材確保の必要性、患者負担・保険料負担の影響を踏まえた対応
近年の物価高騰や賃金上昇を背景に、医療機関の経営状況は厳しさを増しています。同時に、医療従事者の人材確保も重要な課題となっています。さらに、患者さんや保険料負担の増加も懸念されています。これらの影響を十分に考慮しつつ、適切な診療報酬水準の設定が求められます。

2. 全世代型社会保障の実現や、医療・介護・障害福祉サービスの連携強化、新興感染症などへの対応など医療を取り巻く課題への対応
少子高齢化の進行や、医療・介護・障害福祉サービスの連携不足など、医療を取り巻くさまざまな課題に対応することが重要です。地域包括ケアシステムの構築など、全世代型の社会保障制度の実現が目指されています。

3. 医療DXやイノベーションの推進等による質の高い医療の実現
医療推進や、新しいイノベーションの活用により、患者さん中心の質の高い医療サービスの提供を目指します。電子処方箋の普及や、AIなどDXのの活用による業務効率化など、医療現場のデジタル化が重要な課題となっています。

4. 社会保障制度の安定性・持続可能性の確保、経済・財政との調和
医療費の適正化と、社会保障制度の持続可能性の確保が求められています。同時に、経済・財政との調和を図りつつ、質の高い医療サービスを提供できる仕組みづくりが重要です。



2024年診療報酬改定のスケジュール:6月1日施行に後ろ倒し

 当初、2024年度の診療報酬改定は4月1日の施行が予定されていました。しかし、医療機関における新システムの導入や請求業務の変更など、改定に伴う準備作業に時間を要することが明らかになりました。そのため、厚生労働省は医療機関の負担を考慮し、施行時期を2ヶ月遅れの6月1日に延期することを決定したのです。

 この延期により、医療機関は改定内容の確認や、システム改修、請求業務の見直しなどの準備期間を確保できることになります。また、診療報酬改定と同時に行われる介護報酬改定や障害福祉サービス等報酬改定の施行時期との調整も図られることになります。介護報酬改定や障害福祉サービス等報酬改定も、診療報酬改定と同様に6月1日に施行されることになりました。2024年診療報酬改定のポイント

2024年診療報酬改定のポイント

ここからは2024年診療報酬改定のポイントを詳しく解説します。

第8次医療計画
 第8次医療計画とは、各地域の実情に応じた適切な医療提供体制を確保するために、厚生労働省が6年ごとに策定する計画です。2024年度から始まる第8次計画では、地域の医療需要と医療資源の状況を分析し、病床の機能分化や連携強化を図ることで、地域の実情に応じた医療提供体制の構築が目指されます。また、外来医療の機能強化や、かかりつけ医の役割の明確化などを通じて、地域包括ケアシステムとの連携が推進されます。さらに、医療のデジタル化の推進や、医師の働き方改革など、医療提供体制の効率化と生産性向上に向けた取り組みも、第8次医療計画と連動して行われることになります。

 このように、2024年の診療報酬改定は、第8次医療計画の実現に向けた重要な一歩となっています。地域医療構想の推進や外来医療の機能強化、医療のデジタル化など、医療提供体制の再編成に大きな影響を及ぼすことが期待されています。



医師の働き方改革
 医師の長時間労働は深刻な問題として指摘されており、2024年4月から「医療法等の一部を改正する法律」が施行されることになっています。この法改正により、医師の時間外労働の上限が設けられ、医療機関には医師の労働時間管理が義務付けられます。

 具体的には、医師の時間外労働の上限規制に対応するため、医療機関の体制整備に対する評価が行われる見込みです。また、オンラインによる診療や電子処方箋の活用など、医療のデジタル化を通じた業務効率化への取り組みも重視されます。さらに、医師の負担軽減につながる新たな評価の導入も検討されています。医師の業務負担を軽減するための取り組みを適切に評価し、診療報酬に反映させるものです。AIなどのデジタル技術を活用した業務の効率化などが、新たな評価の対象となる可能性があります。


外来医療の強化
 外来医療とは、入院治療を必要としない患者さんに対して行われる医療サービスのことです。具体的には、かかりつけ医による定期的な診療や、専門の医師による外来診療などが該当します。

 外来医療の機能強化に向けて、2024年の診療報酬改定では、かかりつけ医の役割を明確化し、その機能を適切に評価することで、地域における外来医療の中核的な役割を担うことが期待されています。また、外来医療と地域包括ケアシステムとの連携を強化することで、患者さんの状態に応じた切れ目のないサービス提供が目指されます。さらに、外来における慢性疾患の管理を推進することで、重症化の予防や入院抑制などにつなげることも重要な課題となっています。


医療DXの推進
 2024年の診療報酬改定では、医療DXの推進が重要なポイントの1つとなっています。具体的な取り組みとして、まず、全国医療情報プラットフォームの構築により、これまでバラバラに管理されていた患者さんの情報を一元的に共有・活用できるようになります。これにより、重複検査の回避や、医療機関間の連携強化が期待されています。
次に、電子カルテ情報の標準化と全医療機関への普及を進めることで、医療現場の業務効率化や、新たな医療サービスの創出につなげることが目指されています。
さらに、診療報酬改定プロセスのデジタル化(診療報酬改定DX)により、これまで複雑で膨大な作業が必要だった報酬計算プログラムの更新が効率化されます。これにより、医療機関の負担軽減が期待できるのです。


医療・介護・障害サービスとの連携
 2024年の診療報酬改定では、医療、介護、障害福祉サービスの連携強化が重要なポイントの1つとなっています。これは、2025年に向けて推進されている地域包括ケアシステムの実現に向けた取り組みの一環です。

 具体的には、患者さんの情報の共有や他の医療機関との連携方法の改善により、切れ目のないサービス提供が可能になります。また、医療・介護・障害福祉サービスの一体的な提供によって、患者さんの状態に応じたサービスが提供されることが期待されています。さらに、在宅医療の推進と地域包括ケアとの連動を通じて、高齢者が住み慣れた地域で自立した生活を送れるよう支援することも重要な課題となっています。


「診療報酬本体+0.88%」が正式決定
 診療報酬本体とは、医療機関が提供する医療サービスに対して支払われる報酬の部分を指します。この診療報酬本体の改定率が+0.88%となったことで、医療機関の収入が全体として0.88%増加することになります。この改定率は、医療の質の向上や医療従事者の処遇改善などを目的として設定されたものです。

 例えば、医療のデジタル化では、電子処方箋の普及や、医療機関間の情報共有基盤の構築などが評価の対象となります。また、地域包括ケアシステムの構築では、医療・介護・福祉サービスの連携強化が評価されます。さらに、医師の時間外労働の上限規制への対応なども、改定率に反映されます。


プログラム医療機器における評価の明確化
 プログラム医療機器(Software as a Medical Device: SaMD)とは、ソフトウェアそのものが医療機器として機能するものを指します。近年、AI技術の進展などを背景に、プログラム医療機器の活用が広がってきています。

 2024年診療報酬改定では、プログラム医療機器の使用に係る医師から患者さんへの指導・管理に対する新たな評価が設けられる予定です。具体的には、医師がプログラム医療機器の使用方法や注意点について患者さんに説明し、継続的な管理を行った場合に、診療報酬として評価されることになります。これにより、プログラム医療機器の適切な使用を促し、患者さんの安全性を確保することが目的とされています。医療現場におけるプログラム医療機器の活用を後押しするとともに、医療の質の向上にもつながることが期待されています。
 また、プログラム医療機器の特性に応じた評価の在り方についても、今後さらに検討が進められる見込みです。AI技術を活用したプログラム医療機器の有効性や安全性を適切に評価する仕組みづくりが課題となっています。


医療現場での体制の変化

 2024年度の診療報酬改定では、政府が推進する医療DXへの対応が重要なテーマとなっています。具体的には、電子処方箋の導入や電子カルテの導入準備を行う必要があります。また、医療DXを推進するためのパートナーとしてシステムベンダーとの連携も重要です。

 さらに、2024年4月から始まっている「医師の時間外労働の上限規制」に対応するため、医療機関は勤怠管理システムの導入と、生産性向上につながるデジタルツールの活用が求められます。医師の負担軽減のためには、看護師やコメディカル、事務職員へのタスクシフトも進める必要があります。特にカルテ記載や書類作成などの業務については、医療クラークの配置やトレーニングを早期に行うことが重要です。

 医療・介護・福祉の各分野の関係者には、地域内連携の強化が求められています。かかりつけ医や病院、介護・福祉施設などが横の連携を深め、地域完結型のサービス提供体制を構築することが重要です。地域の薬局・ドラッグストアに勤める薬剤師は、医療と介護の橋渡し役としての役割も求められています。また、ICTを活用した業務効率化も重要な課題です。遠隔医療の実施や、医療・介護・福祉の各事業を同一法人で展開する場合のデータ共有システムの導入、サービス提供エリアの集約などが求められます。

 このように、2024年度の診療報酬改定では、医療現場におけるさまざまな体制変化が求められています。医療機関は、デジタル化やタスクシフトなどの取り組みを進めるとともに、地域の関係者との連携強化にも注力する必要があります。


まとめ

 ここまで2024年診療報酬改定のポイントについてお伝えしてきました。
要点をまとめると以下の通りです。

  • 2024年診療報酬改定の背景には、2025年問題・2040年問題といった課題や、地域医療構想や医療DX令和ビジョン2030といった目標がある
  • 2024年診療報酬改定は4月1日施行予定だったが、医療機関の負担を考慮して施行時期を2ヶ月遅れの6月1日に延期した
  • 2024年診療報酬改定は第8次医療計画の実現に向けた一歩であり、医師の働き方改革や外来医療や医療・介護・障害サービスの連携強化、医療DXの推進、診療報酬本体+0.88%の決定などがポイントである

 この記事を通じて、医療従事者の方々はもちろん、医療に関心のある方々も2024年の診療報酬改定のポイントを理解し、その影響を把握する手助けとなれば幸いです。

参考文献


厚生労働省保険局医療課 『令和6年度診療報酬改定の概要(医科全体版)』
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001238899.pdf

厚生労働省「地域包括ケアシステム」紹介ページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/

厚生労働省「地域医療構想」紹介ページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000080850.html

厚生労働省 『医療DXについて』
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/000992373.pdf

自由民主党政務調査会 『「医療DX令和ビジョン2030」の提言』
https://storage2.jimin.jp/pdf/news/policy/203565_1.pdf



メドコム編集部 大野恵美
メドコム編集部 大野恵美
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